コラム
【不動産相続】初めての不動産相続、注意すべきポイントは?

目次
- はじめに:相続発生時の「冷静な対応」が未来を決める
- 不動産を含む相続手続きの全体像と流れ(5つのステップ)
- ステップ1(発生直後):相続人と財産の確認
- ステップ2(3ヶ月以内):相続方法の決定
- ステップ3(10ヶ月以内):遺産分割協議と相続税の申告
- ステップ4(2024年4月から義務化):不動産の相続登記
- ステップ5:相続不動産の活用・売却
- 相続不動産の売却で大損しないための3つの最重要ポイント
- 最重要ポイント1:売却で3,000万円控除を逃すな!
- 最重要ポイント2:譲渡所得税を減らす「取得費加算の特例」
- 最重要ポイント3:共有名義はトラブルの元!売却前の解消を
- 相続手続きと売却をスムーズに進めるための注意点
- 専門家との連携の重要性
- 2024年4月からの「相続登記義務化」に備える
- まとめ:相続不動産は、未来の財産です
1. はじめに:相続発生時の「冷静な対応」が未来を決める
ご家族の不幸により、相続が発生すると、悲しみに加え、複雑な手続きや税金の問題に直面し、大きな負担を感じることになります。特に、相続財産に「不動産」が含まれる場合、手続きはさらに複雑化します。
不動産は、現金のように簡単に分割できないため、遺産分割協議が難航したり、後の売却時に税金で大損したりするリスクが伴います。
このコラムでは、相続が発生した、あるいは今後発生しそうだという方に向けて、不動産相続手続きの全体像と、あなたが損をしないための売却戦略について、専門家の視点から分かりやすく解説します。
2. 不動産を含む相続手続きの全体像と流れ(5つのステップ)
不動産相続の手続きは、様々な期限が設けられています。期限を意識して、計画的に進めましょう。
ステップ1(発生直後):相続人と財産の確認
相続が開始したら、まず遺言書の有無を確認し、法定相続人を確定します。
- 遺言書の確認: 遺言書があれば、原則としてそれに従って手続きが進みます。
- 相続人の確定: 亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し、誰が相続人になるかを確定します。
- 財産のリストアップと評価: 不動産、預貯金、株式などのプラスの財産と、借入金などのマイナスの財産をすべてリストアップします。不動産は、相続税評価額(土地の路線価や固定資産税評価額)に基づいて評価額を算出します。
ステップ2(3ヶ月以内):相続方法の決定
この3ヶ月は非常に重要です。マイナスの財産(負債)が多い場合など、相続を放棄するかどうかを決めます。
- 単純承認: プラスもマイナスもすべて受け継ぐ(多くの方がこれを選択します)。
- 限定承認: プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を弁済し、残ったプラス財産だけを相続する。
- 相続放棄: すべての権利と義務を放棄する。
- 注意点: 相続放棄・限定承認は相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述が必要です。
ステップ3(10ヶ月以内):遺産分割協議と相続税の申告
不動産を含む財産を誰がどのように受け継ぐかを話し合い、税金の申告を行います。
- 遺産分割協議: 相続人全員で、不動産を誰の名義にするか、他の財産とどう分けるかなどを話し合います。話し合いがまとまったら「遺産分割協議書」を作成し、全員が実印で押印します。
- 相続税の申告と納税: 財産の総額が「基礎控除額」(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に税務署に申告・納税が必要です。
- 納税資金の準備: 不動産は現金ではないため、納税資金の捻出方法(預貯金、保険、不動産の売却など)を事前に検討しておく必要があります。
ステップ4(2024年4月から義務化):不動産の相続登記
不動産の名義を亡くなった方から相続人に変更する手続き(相続登記)を行います。
- 名義変更の重要性: 相続登記をしないと、その不動産を売却したり、担保に入れて融資を受けたりすることはできません。
- 【超重要】2024年4月からの義務化: これまでは任意でしたが、2024年4月1日から、不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務化されました。正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があるため、早めの手続きが必要です。(※2024年4月1日より前に相続した不動産で、相続登記がされていないものは、2027年3月31日までに手続きをする必要が有ります。)
- 【早期の遺産分割が難しい場合】「相続人申告登記」という簡便な手続き(※)を法務局にとって、義務を果たすこともできます。※相続人申告手続きは戸籍などを提出して、自分が相続人であることを申告する簡易な手続きです。
ステップ5:相続不動産の活用・売却
不動産を相続した後の活用方法(賃貸、自己居住、売却)を決定し、実行します。売却を決断した場合、次の章の注意点に沿って進めます。
3. 相続不動産の売却で大損しないための3つの最重要ポイント
相続した不動産を売却する際には、通常の売却とは異なる、税制上の優遇措置やリスクが存在します。
最重要ポイント1:売却で3,000万円控除を逃すな!
相続した「被相続人の居住用財産(空き家)」を売却する場合、一定の要件(※)を満たせば、売却益(譲渡所得)から最大3,000万円を控除できる特例があります。
※一定の要件には、建物は昭和56年5月31日以前に建築された家屋に限られ、譲渡の時から譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに家屋の耐震改修又は除却工事を行う、譲渡価額が1億円以下であることなど細かな要件が有ります。
- 適用条件で失敗しやすい点:
- 期限厳守: 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却を完了(引き渡し)すること。この期限を1日でも過ぎると、この特例は適用できません。
- 単独居住の要件: 亡くなった方が一人暮らしをしていた物件であること。
- 対策: 売却の意思決定を早めに行い、この期限から逆算したスケジュールで税理士や仲介会社と連携することが、節税成功の鍵です。
最重要ポイント2:譲渡所得税を減らす「取得費加算の特例」
相続した不動産を売却した場合、売却益にかかる「譲渡所得税」を減らす強力な特例があります。
- 特例の内容: 相続税を支払った人が、その不動産を相続税の申告期限から3年10ヶ月以内に売却した場合、支払った相続税のうち一定額を、売却時の「取得費」に加算できます。
- 効果: 取得費が増えることで、売却益が圧縮され、結果的に支払う譲渡所得税が大幅に軽減されます。
- 対策: この特例と「3,000万円控除」は併用できないため、どちらが有利かを必ず税理士にシミュレーションしてもらう必要があります。
最重要ポイント3:共有名義はトラブルの元!売却前の解消を
不動産を複数の相続人で「共有名義」で相続した場合、その後の売却で大きなトラブルになりがちです。
- 売却時のリスク: 不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要です。一人でも反対すれば売却できません。また、将来的に共有者間で意見が対立したり、共有者の相続が発生してさらに名義人が増えたりすると、問題が複雑化します。
- 対策: 遺産分割協議の段階で、「換価分割」(不動産を売却して現金化し、その現金を相続人で分ける)を選択するか、特定の相続人が不動産を単独で取得し、他の相続人に現金を渡す「代償分割」を検討し、単独名義にしておくことが賢明です。
4. 相続手続きと売却をスムーズに進めるための注意点
専門家との連携の重要性
相続が円満に、かつ税金面で最も有利に進むかどうかは、専門家との連携にかかっています。
- 税理士: 相続税の申告、各種特例のシミュレーション、納税資金の相談。
- 司法書士: 相続登記(名義変更)の手続き。
- 不動産仲介会社: 不動産の適正評価、売却戦略の立案、買主との交渉。
これらの専門家が連携することで、税金と売却の期限を同時に守り、最適な結果を目指すことができます。
2024年4月からの「相続登記義務化」に備える
前述の通り、相続登記が義務化されました。相続人や住所変更が多い不動産ほど、戸籍収集に時間がかかり、売却手続きにも影響が出ます。
- 対策: 遺産分割協議が長引く可能性がある場合でも、まずは相続人であることを示す「相続人申告登記」を行い、過料のリスクを回避しつつ、売却のタイミングを逃さないよう準備を進めてください。
5. まとめ:相続不動産は、未来の財産です
相続不動産は、ただの手続きや税金の対象ではありません。故人から託された、あなたの未来の財産です。
しかし、知識がなければ、その財産はあっという間に税金やトラブルで目減りしてしまいます。大切なのは、期限を知り、リスクを回避するための知識を身につけることです。
私たち、株式会社Orioは、相続不動産の売却における特有の複雑さを理解し、税理士や司法書士とも連携しながら、お客様の手元に最大限の現金を残すための戦略的な売却サポートを得意としております。
ご相談を心よりお待ちしております。