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【住宅購入】ペアローン組むならここに注意!将来の売却まで見据えた夫婦のための徹底解説

公開日: 2025.10.30 更新日: 2025.10.30
ペアローン

目次

 

  1. はじめに:共働き世帯の強い味方「ペアローン」とは?
  2. ペアローンの仕組みと連帯債務・連帯保証との違い
    • 2-1. ペアローンの基本的な仕組み
    • 2-2. 混同しやすい「連帯債務型」「連帯保証型」との違い
  3. ペアローン最大のメリット(資金調達と税制優遇)
    • 3-1. 借り入れ可能額が大幅に増える
    • 3-2. 夫婦それぞれが「住宅ローン控除」を受けられる
  4. ペアローン最大のデメリットと注意すべきリスク
    • 4-1. 離婚・関係解消時の複雑な手続きとリスク
    • 4-2. どちらか一方が死亡・病気になったときのリスク
    • 4-3. 団信の保障範囲と「借り換え」の難しさ
    • 4-4. 将来の売却や住み替え時の手続きの複雑性
  5. ペアローンで「成功」するための具体的なチェックリスト
    • 5-1. 夫婦間で「返済割合」を明確に決める
    • 5-2. 団信・保険の保障内容をしっかり確認する
    • 5-3. 離婚や病気など「もしも」の時の出口戦略を決めておく
  6. まとめ:ペアローンは戦略的に活用しましょう

 

1. はじめに:共働き世帯の強い味方「ペアローン」とは?

 

近年、住宅価格の高騰や共働き世帯の増加に伴い、夫婦二人の収入を合算して住宅ローンを組む「ペアローン」の利用者が増えています。特に、首都圏のような高額エリアでマイホームを購入する際、「単独では希望額に届かない」というご夫妻にとって、ペアローンは非常に強力な選択肢となります。

ペアローンを利用すれば、世帯としての借り入れ可能額が大幅に増加し、理想のマイホームを手に入れやすくなるのが大きな魅力です。

しかし、ペアローンは「夫婦で一つの契約」ではなく、「夫婦がそれぞれ別の契約」を結ぶ特殊な仕組みです。そのため、メリットが大きい反面、離婚、病気、将来の売却など、人生の大きな転機において、単独ローンにはない複雑で深刻なリスクを伴います。

このコラムでは、ペアローンの仕組みをわかりやすく解説するとともに、特に見落としがちなデメリットと注意点、そして将来の売却まで見据えた際の戦略的な活用方法をお伝えします。


 

2. ペアローンの仕組みと連帯債務・連帯保証との違い

 

ペアローンを組む前に、他の夫婦向けローン形態との違いを正確に理解することが重要です。

 

2-1. ペアローンの基本的な仕組み

 

ペアローンとは、夫婦それぞれが主たる債務者となり、お互いの連帯保証人になる形式です。

  • 契約: 夫婦それぞれが金融機関と個別の住宅ローン契約を二つ結びます。
  • 返済: それぞれが契約したローン残高について、単独で返済義務を負います。
  • 連帯保証: 夫のローンに対して妻が、妻のローンに対して夫が連帯保証人となります。

この仕組みにより、夫婦の収入合算ではなく、各自の収入に基づいた審査が行われます。

 

2-2. 混同しやすい「連帯債務型」「連帯保証型」との違い

 

ペアローンとよく比較されるのが、「連帯債務型」や「連帯保証型」です。

種類 契約数 債務者 住宅ローン控除 団信の加入
ペアローン 2つ 夫婦それぞれが主債務者 夫婦それぞれが適用可 夫婦それぞれが加入
連帯債務型 1つ 夫婦共同で主債務者 夫婦それぞれが適用可 主債務者のみが加入(特約で2人可)
連帯保証型 1つ どちらか一方が主債務者 主債務者のみが適用可 主債務者のみが加入

【ポイント】 ペアローンは、連帯債務型と同様に夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられる点が最大の魅力ですが、契約が2つであるため、後述する手間とリスクも2倍になることを意味します。


 

3. ペアローン最大のメリット(資金調達と税制優遇)

 

ペアローンが共働き世帯に選ばれる理由は、この二つの強力なメリットがあるからです。

 

3-1. 借り入れ可能額が大幅に増える

 

夫婦の収入を合算することで、金融機関が審査する年間返済能力が高まります。これにより、単独で借りる場合に比べて、融資額を大幅に増やすことができ、より広い、あるいは都心に近い高額な物件の購入が可能になります。

 

3-2. 夫婦それぞれが「住宅ローン控除」を受けられる

 

ペアローンの最大のメリットの一つが、税制上の優遇措置です。

  • 優遇内容: 夫婦それぞれが主たる債務者であるため、夫婦それぞれが購入した持分割合に応じて、年末のローン残高に基づいた「住宅ローン控除」(住宅借入金等特別控除)を受けることができます。
  • 効果: 夫婦の所得税・住民税から控除される金額が単独ローンよりも増えるため、家計への還元効果が大きくなります。

 

4. ペアローン最大のデメリットと注意すべきリスク

 

メリットが大きい分、ペアローンは単独ローンにない、複雑で深刻なリスクを抱えています。特に以下の4点は、将来の売却や生活の変化に直結するため、必ず注意が必要です。

 

4-1. 離婚・関係解消時の複雑な手続きとリスク

 

夫婦の関係が破綻し、離婚に至った場合、ペアローンは極めて複雑な問題を引き起こします。

  • ローンの残債: 離婚後も、夫婦それぞれが結んだローン契約は継続するため、連帯保証人としての責任も継続します。
  • 財産分与と名義: どちらかが住み続ける場合、住み続けない側が、住み続ける側のローンの連帯保証人から抜けられないという問題が生じます。また、持分(名義)をどうするかという財産分与の問題も絡み、交渉が難航しがちです。
  • 【売却時の問題】 不動産を売却する場合、夫婦それぞれの名義で不動産を所有しているため、売却手続きには夫婦両方の実印と意思確認が必須です。離婚で関係が冷え切っていると、売却自体が頓挫するリスクがあります。

 

4-2. どちらか一方が死亡・病気になったときのリスク

 

単独ローンであれば、債務者が死亡または高度障害になった場合、団体信用生命保険(団信)によってローンが完済されます。しかし、ペアローンでは複雑な事態になります。

  • リスク: 夫が死亡した場合、夫の団信によって夫の分のローンは完済されますが、妻のローンはそのまま残ります。残された妻は、自分の分のローン返済に加え、夫の分のローンの連帯保証責任は免れますが、夫を亡くした状態で単独で自分のローンを返し続ける必要があります。
  • 対策: 夫婦のローンのバランスや、残された側が返済できるかを検討し、生命保険などでカバーする必要があります。

※銀行によっては、「連生団体信用生命保険付住宅ローン」という住宅ローンが有ります。連帯債務で借り入れされたご夫妻のどちらに万一のことがあった場合でも、 ローン残高が0円となる住宅ローンです。

4-3. 団信の保障範囲と「借り換え」の難しさ

 

  • 団信: ペアローンでは、夫婦それぞれが自分の借り入れ分にのみ団信に加入します。夫婦のどちらかが死亡・高度障害になっても、相手のローン残高は免除されない点に注意が必要です。
  • 借り換えの難しさ: 将来、金利が下がった際に借り換えを検討する場合、夫婦それぞれが審査を受け直す必要があります。どちらかの収入が減っていたり、健康状態が悪化していたりすると、借り換え自体が不可能になるリスクがあります。

 

4-4. 将来の売却や住み替え時の手続きの複雑性

 

不動産仲介の立場から見て、ペアローン物件の売却は単独ローンに比べて手続きが複雑になります。

  • 所有権の確保: 売却時、夫婦それぞれの持分に設定された抵当権を抹消しなければなりませんが、その抹消には夫婦それぞれのローンの完済が必要です。
  • 残債リスク: 売却額が夫婦のローン残高合計を下回るオーバーローンとなった場合、残った負債の返済割合について夫婦で再度協議が必要となり、売却決済が遅延するリスクが高まります。

 

5. ペアローンで「成功」するための具体的なチェックリスト

 

ペアローンをリスクなく活用し、成功に導くためには、戦略的な準備と夫婦間の合意形成が不可欠です。

 

5-1. 夫婦間で「返済割合」を明確に決める

 

  • 資金計画の明確化: 夫婦の収入比率や、将来的なライフイベント(出産、育休など)を考慮し、ローンの借り入れ割合と、毎月の返済割合を明確に決めましょう。
  • 名義と割合の統一: ローン契約の割合と、不動産の持分割合を一致させることで、贈与税のリスクを回避し、将来の売却時も手続きがシンプルになります。(出典:国税庁

 

5-2. 団信・保険の保障内容をしっかり確認する

 

  • 保障の手厚い団信の検討: 通常の団信(死亡・高度障害時完済)に加え、がん保障特約就業不能保障特約など、病気リスクまでカバーできる保障を検討しましょう。
  • 収入保障保険の活用: 万が一の際に、残された側が相手のローン返済を肩代わりできるよう、夫婦で収入保障保険に加入することも有効な対策です。

 

5-3. 離婚や病気など「もしも」の時の出口戦略を決めておく

 

  • 書面での合意: 離婚した場合、どちらが住み続けるか、その際のローンの残債、連帯保証をどう解除するかなど、最悪のケースを想定したルールを書面で残しておきましょう。
  • 売却の検討: 負債を清算し、トラブルを最小限に抑えるためには、離婚時に「売却して現金化する」という選択肢が最もシンプルです。売却のタイミングと方法について、事前にプロの意見を聞いておくことが重要です。

 

6. まとめ:ペアローンは戦略的に活用しましょう

 

ペアローンは、共働き世帯の購買力税制メリットを最大化する、非常に魅力的な方法です。しかし、その複雑な仕組みゆえに、人生の転機において夫婦に大きな負担を強いる可能性があります。

重要なのは、「借りる前」に「最悪の事態」を想定し、離婚、病気、将来の売却といったすべてのリスクに対する明確な出口戦略を夫婦間で合意しておくことです。

私たち(株)Orioでは、単に契約を成立させるだけでなく、将来の売却まで見据えた資金計画とリスクヘッジのアドバイスを提供しています。ペアローンを検討される際は、ぜひ一度ご相談ください。

【情報の出典(参照元)】

  • 税制優遇・名義: 国税庁ホームページ「住宅借入金等特別控除」に関する情報、贈与税に関する情報
  • 融資制度: 金融庁、各金融機関の住宅ローン商品概要、住宅金融支援機構(フラット35)の制度概要
  • 不動産取引・法務: 宅地建物取引業法、民法(財産分与、相続)