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【不動産相続】複数の相続人がいる場合の、将来的なトラブルを未然に防ぐための注意点

公開日: 2025.11.30 更新日: 2025.11.30
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目次

 

  1. はじめに:相続不動産が「争族」の種になる理由

  2. ステップ1:最も危険な「共有名義」のリスク回避戦略

    • 2-1. 共有名義が引き起こす3つのトラブル

    • 2-2. トラブルを避ける「遺産分割」の3つの選択肢

  3. ステップ2:相続登記と法改正への対応(2024年4月義務化)

    • 3-1. 義務化が売却にもたらす影響

    • 3-2. 登記を放置すると売却時に困る理由

  4. ステップ3:売却を前提とした税務・資金対策

    • 4-1. 「換価分割」で納税資金を確保する

    • 4-2. 税制優遇の適用可否をめぐる争い

  5. ステップ4:円満解決のための「価格」と「時期」の合意形成

    • 5-1. 感情論を排除する「客観的な評価」の重要性

    • 5-2. 専門家を交えた話し合いがトラブルを未然に防ぐ

  6. まとめ:相続は「未来の家族関係」への投資


1. はじめに:相続不動産が「争族」の種になる理由

 

ご家族を亡くされた後、残された財産をどのように分けるかという問題、特に「不動産」が相続財産に含まれる場合は、相続人間のトラブル(いわゆる「争族」)に発展しやすい傾向にあります。

現金や株式と異なり、不動産は物理的に分けられない「分割困難な資産」だからです。法定相続分が決まっていても、「実家は長男が継ぐべき」「遠方に住む自分は現金が欲しい」といった様々な思惑が絡み、話し合いが難航します。

このコラムでは、複数の相続人がいる場合に、将来的なトラブルを未然に防ぎ、円満かつ最も有利な条件で不動産を売却・活用するための、専門家としての有料級のアドバイスを、手続きの各側面から分析し解説します。


2. ステップ1:最も危険な「共有名義」のリスク回避戦略

 

遺産分割協議がまとまらない場合に、とりあえず「全員の共有名義」にしてしまうケースがありますが、これは将来のトラブルの種をまいていることに等しい、最も危険な選択肢です。

2-1. 共有名義が引き起こす3つのトラブル

 

  1. 売却時の意見対立: 不動産全体を売却する場合、原則として共有者全員の同意が必要です。相続人のうち一人でも価格や時期に反対すれば、売却はできません。

  2. 賃貸・リフォームの制約: 不動産を賃貸に出す場合や、大規模なリフォームを行う場合も、過半数(または全員)の同意が必要です。意見の対立が、必要な修繕の遅れや収益機会の損失につながります。

  3. 世代を超えた複雑化: 共有者が亡くなると、その持分がさらにその子の世代(孫世代)へと細分化(代襲相続)され、共有者が雪だるま式に増加します。数十年後には数十人の共有者がいる状態となり、事実上、売却や活用が不可能になります。

2-2. トラブルを避ける「遺産分割」の3つの選択肢

 

トラブルを避けるためには、遺産分割協議で不動産の権利を単独の名義にするか、全員が現金で分ける形に持ち込むことが必須です。

分割方法 内容 メリット デメリット・注意点
現物分割(単独名義) 不動産そのものを特定の相続人(長男など)が単独で相続する。 管理や売却の意思決定が迅速に行える。 他の相続人との公平性を保つのが難しい。
代償分割 特定の相続人が不動産を相続し、その代償として自己の現金を他の相続人に支払う。 不動産の売却をせずに、公平な分配を実現できる。 不動産を取得する相続人に、代償金を支払う資金力が必要。
換価分割 不動産を売却して現金化し、その現金を相続人で公平に分配する。 最も公平な分割方法であり、後のトラブルが少ない。 仲介手数料などの売却費用が発生する。相続人全員が売却に合意する必要がある。

【アドバイス】 納税資金の確保や公平性を重視するならば、換価分割を前提に話し合いを進めるのが最も現実的でトラブルが少ない方法です。


3. ステップ2:相続登記と法改正への対応(2024年4月義務化)

 

不動産の所有権を亡くなった方から相続人へ変更する「相続登記」は、複数相続人がいる場合、特にトラブルの火種となります。

3-1. 義務化が売却にもたらす影響

 

2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。

  • 期限: 不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければ、過料(行政上の罰則)が科される可能性があります。

  • 売却への影響: 義務化により、相続登記の放置は法律違反となるため、買主側も登記が完了していない物件を敬遠する傾向が強くなります。売却活動に入る前に、遺産分割を完了させ、できれば単独名義での登記を済ませておくことが、スムーズな取引の前提条件となります。

3-2. 登記を放置すると売却時に困る理由

 

相続登記を放置し、売却を決めた時点で初めて登記手続きを始めようとすると、以下のリスクが生じます。

  1. 手続きの遅延: 遺産分割協議が整っていない場合、売却の合意形成から戸籍収集、登記申請完了まで数ヶ月を要することがあります。買主は迅速な引き渡しを求めるため、手続きの遅延が原因で契約を解除されるリスクがあります。

  2. 相続人の増加: 登記を放置している間に、相続人の中に不幸があった場合、さらにその相続人の相続人が増え、手続きが極めて複雑になり、費用も高額になります。

【アドバイス】 義務化の有無にかかわらず、不動産を売却・活用する予定がある場合は、遺産分割協議書作成後、速やかに司法書士に依頼し相続登記を完了させることが、トラブル防止と資産価値維持の基本です。


4. ステップ3:売却を前提とした税務・資金対策

 

不動産相続では、税務上の特例をめぐって相続人間に不公平感が生まれることもトラブルの原因となります。

4-1. 「換価分割」で納税資金を確保する

 

相続税が発生する場合、納税期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)が迫ります。

  • リスク: 不動産は現金ではないため、納税資金が不足すると、他の相続人が持つ現金や預貯金を提供してもらう必要が生じ、不公平感からトラブルになりやすいです。

  • 対策: 不動産の売却(換価分割)を前提とし、売却代金から納税額を捻出し、残りを公平に分割する計画を立てることで、納税資金をめぐる揉め事を回避できます。

4-2. 税制優遇の適用可否をめぐる争い

 

特定の相続人だけが売却する場合、その人だけが税制優遇を受けることで、不公平感が生じることがあります。

  • 問題となる特例の例:

    • 被相続人の居住用財産を売った場合の3,000万円特別控除(空き家特例)

    • 相続税の取得費加算の特例

  • 対策: 売却の前に、相続人全員で売却の意思と分割方法について合意を得たうえで、売却益にかかる税金(譲渡所得税)のシミュレーションを税理士に依頼し、「最終的な手取り額」を明確にしておくことが重要です。


5. ステップ4:円満解決のための「価格」と「時期」の合意形成

 

相続人同士の話し合いが感情論にならず、ビジネスライクに進むかどうかが円満解決の鍵です。

5-1. 感情論を排除する「客観的な評価」の重要性

 

相続人間で最も揉めるのが「不動産の評価額」です。一人が「実家には思い出があるからもっと価値があるはずだ」と主張したり、逆に「早く現金が欲しいから相場より安く売ろう」と主張したりするケースがあります。

  • 対策: 不動産会社に依頼する査定書や、場合によっては不動産鑑定士による鑑定評価など、客観的な根拠に基づいた価格を提示することが不可欠です。感情的な価格ではなく、「市場で売れる妥当な価格」で合意することで、公平性が担保されます。

5-2. 専門家を交えた話し合いがトラブルを未然に防ぐ

 

相続手続きや売却は専門的な知識の塊です。相続人同士だけで解決しようとすると、法的な見落としや税務上の不利益が生じがちです。

  • 専門家(士業)連携のメリット:

    • 司法書士: 複雑な戸籍収集や相続登記、遺産分割協議書の作成を代行し、法的に完璧な形で手続きを完了させます。

    • 税理士: 相続税申告と譲渡所得税のシミュレーションを行い、最も有利な税務上の選択を指南します。

    • 不動産仲介業者: 客観的な市場価格を提供し、売却を前提とした遺産分割案(換価分割)を提案します。

【アドバイス】 複数の相続人がいる場合は、必ず専門家を第三者として早期に介入させ、手続きの道筋と、価格の客観性を確保することが、何よりも円満解決につながります。


6. まとめ:相続は「未来の家族関係」への投資

 

不動産の相続は、単なる財産の承継ではなく、残されたご家族の「未来の関係性」を試す場でもあります。

「共有名義」という安易な妥協を避け、「単独名義」での活用または「換価分割」での売却を前提に、透明性の高い手続きを踏むことが、将来的なトラブルを未然に防ぐ唯一の方法です。

私たちOrioは相続不動産の売却に強い仲介業者として、単に高く売るだけでなく、相続人皆様が納得できる形でスムーズに資産を現金化し、円満な資産承継を実現するためのサポートを得意としております。相続に強い司法書士や税理士とも連携し、皆様の不安を解消いたします。

ご家族の将来のためにも、まずはお気軽にご相談ください。