近年、相続不動産の扱いについてのご相談をたくさんいただきます。どのように相続すればいいのか?といったご相談から、相続したはいいが、固定資産税や維持管理の負担が大変、もしくは有利な有効活用はないか?といったご相談など様々です。
ここでは、不動産を相続する流れや、相続登記にかかる費用、必要な書類等を説明します。
不動産を相続するまでの流れ
1.遺言書を確認する
相続が発生した場合、遺言書があれば基本的にその記載に沿って相続が行われます。無い場合は、相続人の遺産分割協議で相続が行われます。
2.相続人の確定
相続が発生したら、早めに相続人を確定させる必要があります。被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本を取り寄せて調べます。
3.財産目録を作成する
相続人を確定させるとともに、被相続人の財産を特定して財産目録を作成します。相続財産に不動産があるかどうかは市区町村から届く固定資産税・都市計画税の納税通知書を確認します。また、市区町村から「名寄帳」を入手すればその市区町村で被相続人が所有する不動産情報が一覧できます。納税通知書がなければ、所有不動産があると思われる市区町村で名寄帳を調べます。
4.遺産分割協議を行う
遺言書があれば、原則として遺言書に沿って相続しますが、ない場合は相続人全員で遺産分割協議を行います。この協議で分割内容の合意がなされたら、被相続人の誰がどの相続財産をどんな割合で相続するかを記載する「遺産分割協議書」を作成します。
5. 不動産の相続登記をする
不動産を相続するには、相続登記をすることで被相続人から相続人へ名義が変更されます。
6.相続税の申告・納付
相続税の申告・納付の期限は、相続開始を知った日から10か月以内となっています。期限内に申告・納付できないと相続税に関する特例の適用ができなかったり、滞納税がかかる可能性があります。
不動産を相続する方法
1.現物分割
現物分割とは不動産をそのままの形で相続する方法です。
例)2人の相続人が2つの不動産を1つずつ相続する。不動産を売却して売却代金を相続する方法に比べ簡単ですが、評価額の異なる不動産を現物分割する場合は代償分割を併用したほうが不均衡は発生しません。
2.代償分割
代償分割とは、現物で相続財産を取得した相続人が、他の相続人に対して代償財産を支払う方法。
例)被相続人の2人の子供が相続人で相続財産が評価額3,000万円の不動産のみという場合、代償分割で均等に相続するとすると、1人が不動産を相続し、もう1人に1,500万円の代償金を支払うことになりますあ。
但し、当事者間の合意があれば代償金の額は均等である必要はありません。
3.換価分割
換価分割とは、不動産を売却して現金化し、それを相続人で分割して相続する方法。
換価分割は、相続人が不動産での相続を望んでいない場合や、相続税の資金が用意できない場合などでよく利用されます。
例)売却価格3,000万円の不動産を、相続人の2人の子供が均等に分割する場合1,500万円ずつ相続
4.共有名義
複数の相続人が共有名義で相続する方法。
この場合、各相続人が所有する割合を共有持分として設定し登記します。この方法で注意したいのは、相続不動産を売却する際に、共有名義人全員の意思決定や売却への同意が必要だったり、共有名義人全員の署名捺印が必要だってり、共有名義人が亡くなって、その子供が代襲相続したときに相続人間で揉めたりすることも考えられることです。
不動産を相続する際の評価方法
不動産を相続する際には、その不動産の評価額を知る必要があります。相続税申告の際に使われる不動産評価額は、購入時の価格や建築費用ではなく時価評価となります。
不動産評価額の基準となるのは、土地であれば「路線価」、家屋であれば「固定資産税評価額」です。
土地の評価方法
土地の評価額は、基本的には路線価を基準とする「路線価方式」で評価しますが、路線価がない地域は「倍率方式」で評価します。
- 路線価方式
路線価とは、土地が接道する道路ごとに設定された土地の価格で、国税庁の路線価図・評価倍率表で調べます。
この路線価を基準に評価額を算出する方法を「路線価方式」といいます。
路線価は1㎡あたりの価格が千円単位で記載されており、「350A」と記載されていれば、1㎡の価格は35万円です。これに、地積や道路からの奥行等で価格補正してその土地の評価額が決まります。尚、借地権の評価額は、その土地の評価額に借地権割合を掛けて算出します。借地権割合は、路線価の数字の後にアルファベットで記されており、借地権割合90%のAから借地権割合30%のGまで10%刻みで設定されています。
- 倍率方式
倍率方式とは、路線価が設定されていない土地の評価額を算出する方法です。固定資産税評価額を基準に、その土地に設定された倍率を掛けて算出します。
倍率も国税庁の路線価図・評価倍率表で調べられます。
家屋の評価方法
家屋は、固定資産税評価額がそのまま相続時の不動産評価額になります。固定資産税評価額は、毎年4月頃送られてくる固定資産税・都市計画税納税通知書に記載されています。手元に納税通知書がない場合は、市区町村役場の窓口でも確認できます。
相続税の計算式
相続税を計算する流れは以下の通りです。
1.正味の遺産額を計算する
正味の遺産額:全ての財産―非課税財産―債務など+一定の贈与財産・・A
- 全ての財産・・不動産、預貯金、現金、株式等有価証券など
- 非課税財産・・お墓、生命保険金、死亡退職金等
- 債務など・・被相続人の借金、未払金、葬式費用等
- 一定の贈与財産・・相続開始前3年以内の贈与財産、相続時精算課税制度の対象となった贈与財産
2.基礎控除額を計算する
〈基礎控除額の計算式〉
基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の人数・・B
3.課税遺産総額(相続税の対象となる財産)を計算する
課税遺産総額:正味の遺産額(A)-基礎控除額(B)・・C
※課税遺産総額がマイナスまたはゼロの場合相続税はかかりません。
相続登記にかかる費用
不動産を相続する際には、相続税以外にも以下の相続登記に関する費用がかかります。
〈登録免許税〉
登録免許税:固定資産税評価額(下3桁切り捨て)×0.4%(税率)
※算出した金額の下2桁は切り捨て
〈登記事項証明書などに関する費用〉
- 登記事項証明書(不動産1件につき600円)、戸籍謄本、住民票などを取得する費用
- 書類郵送費
※遺産分割協議書作成や相続登記手続きを司法書士に依頼する場合は、別途司法書士報酬も必要となります。